アーツブレインズ

THOUGHT

開発者の想い

【第2回 2つのふたえメイクと第3の道。】

自己発見や自己表現など、自分作りのためのメイクとして、ふたえ化粧品を開発するのが目的でした。

  • ふたえメイクの方法原理

     60年代に誕生したふたえメイクの方法原理は2つありました。1つは、水性ラテックスエマルジョン(天然ゴム)を主原料にした「つけまつげ用のり」を改良した『接着法』によるものです。 瞼のふたえラインに沿ってラテックス液を塗り、線状に貼り合わせてふたえのようなシワを作ります。 もう1つは、細く切った粘着テープを睫に沿って貼り、瞼の皮膚をテープで折り込んでふたえを作る『折り込み法』です。
    『接着法』は、接着してシワをつくるので、腫れぼったいひとえ瞼でもふたえの様に見せることができます。しかし、瞼が接着される事でその場所の皮膚幅が狭くなります。目を閉じると引きつれるので不自然に見えます。また、ラテックスは汗に緩みやすい為、取れやすいという難点がありました。『折り込み法』は、接着しないので目を閉じても引きつれることはありません。しかし、ふたえにしにくい腫れぼったいひとえ瞼には適していませんでした。また、テープが目立ってしまうので外出に不向きなので、ふたえ癖の促進や定着に使われるようになりました。
    この2つの方法によるふたえメイクには、それぞれに長所と短所があり、各メー カーは長所を生かし短所をカバーする事を考え改良が進みました。汗に弱かったラテックスのりは耐水性が高められ、アイテープは普段でも使いやすいように形や柔らかさなどが変更されました。また、アイテープを液状にして塗るタイプが開発されたり、持ち歩きや使い勝手を考慮して容器や筆なども工夫されました。

  • 第3の道

     しかし、私が考える開発の課題はこうした事とは少し違っていました。
    ふたえメイクを悩み化粧品から脱却させ、ひとえ瞼のコンプレックスをなくす」 その事こそが、目的だったからです。
    愛用者の意識を変えるのは難しい事です。その為には、まずマーケット (売り場や売り方)を改革し、売り手と買い手の両方の意識変化を促す働きがけと、その改革ができる画期的な商品を開発することが必要だと考えました。
     第3の道は先人のない道です。開発の課題は、次のようなものでした。
     1つ目は、『こっそりと隠れて使っている』という状況を改善することです。その為には、周りのみんなに話したくなるような楽しさや驚きが必要だと考えました。楽しいとか面白いという感情は、他人に伝え共有したくなります。
    こうした情報が交流されれば、仲間が繋がり力が生まれます。売り場も目立つ場所に変え、楽しくてお洒落なポップで飾り付けらなければなりません。
      2つ目は、アイライナーやアイシャドー、マスカラなどのアイメイク化粧品のように、スタンダードな化粧品のレベルまで価値を高め、広めることです。その為には、本物と区別の付かないリアルなふたえメイクを完成させる必要がありました。もちろん、ハードな運動をしてもとれず、プールでも使えるような安定したものにするのも課題です。

  • 未来のふたえメイク

     私が想像した未来のふたえメイクは、自分の個性やセンスに合わせてドレスを選ぶように、自由に目の形を造形するものです。それは、コンプレックスを隠したりする悩み化粧品ではなく、自己発見や自己表現など、自分作りのためのメイクの姿でした。 それには、アイライナーやアイシャドーを陰影 (彩色)メイクだとするのなら、つけまつげや伸びるマスカラのような造形メイクの1分野として、ふたえメイクを完成させることです。つまり、単にひとえふたえにするものではなく、目の表情、印象をもっとリアルで自由に造形できる第3の「ふたえメイク化粧品」の開発を目指さねばなりませんでした。開発のスローガンに迷いはありません。『完全ふたえ』『ふたえ自由自在』に決まりました。

  1. 01.流行をつくった少女のこと。
  2. 02.2つのふたえメイクと第3の道。
  3. 03.売れない企画。
  4. 04.「ライフスタイルを変える力」。
  5. 05.「開発は自己否定」。
  6. 06.開発は未来を創る