THOUGHT
開発者の想い
【美への探求 vol.01】
人間の脳が生みだす、奇跡の芸術。
「化粧をするということは、どういうことなのか。」
そんな原点に立ち返らさせる、一枚の写真があります。
彼女は何と出会い、身の回りでどんなことが起きたのだろうか。その喜びや哀しみ、怒り。そして、何に感動し、こんな風に顔を描いたのでしょうか。
たとえば、「赤いバラ」や「白いユリ」、「甘い香りのライラック」や「満開に咲いたピンクの桜」などを、総称して“花”という言葉で表現します。
実をいうと、これは人間の頭の中で起きている凄いことなのです。元々は個別であったバラやユリの花に共通のイメージを見つけ、それを頭の中で演算してシンボリック化したのが“花”という言葉だからです。
人の言葉は、個別の物に記号を与えただけではありませんでした。
色々な物を見たり沸き興る感情の経験を蓄え、イメージに書き換えてシンボリック化します。これこそが、人間の脳の中に生まれた複雑な神経回路によって可能となった、言語の世界です。
また、人の脳はこれだけではありません。もっと凄いことをやってのけます。
あなたが詩人だったらその花を見た感動を文字に変え、ハイネのように「薔薇よ、百合よ、鳩よ、太陽よ」と愛の詩に綴り、画家であればゴッホのようなヒマワリを描き、
音楽家であればモーツァルトのようにヴァイオリンを奏でるかもしれません。
人はなんて素晴らしい芸術家なのでしょうか。
芸術は特別な人間に与えられた、特別な能力ではありません。 私たちが毎日さりげなくしている化粧は、「誰でも持っている芸術脳が生み出している」と考えたら、興味深いことではないでしょうか。
text:野尻英行