THOUGHT
開発者の想い
【美への探求 vol.11】
「平たい顔」「彫りの深い顔」
人の顔の骨格について違いを特定する測定方法に、鼻頬角(びきょうかく)というものがあります。 これは鼻根を頂点に左右の両眼窩(アイホール)の外側を直線で結んだ角度のことで、顔の曲率を調べるためのものです。 主に人種の違いや古代人の頭骨調査に用いられる測定方法の一つで、ネアンデルタール人の鼻頬角は136.6度という計測データも残されています。
コーカソイド(白人)の鼻頬角は136~141度で、日本人と比べて非常に鋭角です。 これは、長い間の狩猟生活によって運動能力に適応して肺が大きくなったため、それにともない鼻腔を拡げる必要性から鼻が高く突起し、 眉骨も高くなったのではないかと考えられています。さらに、肉食中心であったことから咀嚼筋(そしゃくきん)が発達せず、顎は細く小さくなり頬骨の位置も下がりました。 また、モンゴロイドよりも眼窩脂肪が少ないため、眼球が落ち窪んでいて、彫りが深くハッキリとしたふたえ瞼という特徴があります。
一方、日本人の鼻頬角は140~150度と広く、鈍角で平たいことがわかります。縄文人は咀嚼筋が発達していたため頬骨が高く、 横に張り出していました。また、古墳時代に朝鮮半島からやってきた渡来人は眉骨と鼻根が平板で眼窩脂肪が多く、ひとえ瞼が多かったと考えられています。 この二つの顔の骨格的特徴が混ざって残されているのが、今の私たち日本人なのです。
鼻頬角が広くなると顔が平板になり、正面から見えている顔の造形(目・眉・鼻など)が、横顔では隠れていて認識しづらくなります。 コーカソイドは鼻頬角が鋭角であるため、正面から見える顔のパーツが横顔でもよく見えます。しかし、日本人の横顔は目と眉が真横になり形が判別しにくいため、 「日本人は前から見ないと誰だか判らない」「日本人には正面と真横の二つの顔がある」と欧米人が言うのも頷ける話です。
こうした骨格の違いによって、当然メイクアップの方法にも違いが生まれます。私たち日本人は、より横顔を立体的に見せるようなメイクをする心がけが大切です。
text:野尻英行